CRA手法及びGHS分類選択の説明
よく分からない場合は、デフォルトで選択されている「少量・低頻度向け/日本GHS」でご使用下さい。
半定量的手法/定性的手法/少量・低頻度向け・・・リスクアセスメントの手法を選択します。
このツールでは、JISHA方式(健康障害防止)半定量的手法のうち、実測値を用いずにリスク評価する手法を単に「半定量的手法」としています。物質の有害性の程度を、GHS分類に対応する管理目標濃度
レベルまたは職業ばく露限度(OEL)から見積もり、一方、ばく露濃度の程度を、使用する物質の性質、換気状況、使用量、作業時間などから見積もり、これらの有害性の程度とばく露濃度の程度からリスクを評価します。OELで有害性の程度を見積もった場合のリスクレベルの方がGHS分類を使った場合よりも現実的なリスクレベルを得やすいという特徴がありますが、反面、安全側の余裕は少ないため、作業の状況によっては過小評価となるケースもあるので注意が必要です。
ILO方式コントロールバンディング(CB)法に、作業時間・頻度、換気状況などの条件を反映できるようにした、JISHA方式(健康障害防止)CB
法です。作業条件をあらかじめ決められたバンドに区分することでばく露濃度のレベルを推定し、一方、有害性のレベルはGHS分類にて推定します。CB法は、半定量的手法よりも簡易的な手法の位置づけですが、作業条件のバンディングを事業所の実態に合わせることで独自のリスクアセスメントが可能という特徴があります(本システム
では固定)。オリジナルのJISHA方式にはない機能として、このツールでは、GHS分類による有害性だけでなく職業ば く露限度(OEL)を使った有害性指標を使ったリスク評価の結果も得られるようにしています。
厚生労働省とみずほリサーチ&テクノロジーズが共同開発した「少量・低頻度の化学物質取扱作業に向けたリスクの見積り方法」をベースにしています。COSHH Essentialsのコントロールバンディングを少量・低頻度取り扱い向けに拡張しており、OELと推定ばく露濃度との比較からリスクレベルを評価し、OELがないものに限り、GHS分類から見積もった管理目標濃度と推定暴露濃度との比較を使用します。但し、本学のツールの「少量・低頻度向け」の方法と「少量・低頻度の化学物質取扱作業に向けたリスクの見積り方法」には、一部以下のような仕様の違いがあります。
- OELには、ACGIHのTLV-TWAとGESTIS DNEL(derived no-effect levels)を使用(産業衛生学会の最大許容濃度は不使用)
- Ceiling値しかないものについては1/5をTLV-TWAとしている。その場合も作業時間・頻度による補正は行う。
- STEL値しかないものについては1/3をTLV-TWAとしている。
- 呼吸器感作性がある場合も作業時間・頻度による補正は行う。
- 揮発性は使用温度と沸点との比較で推定。
- 呼吸用保護具の選択肢として、液体試料の場合は「吸収缶付半面型」「吸収缶付全面型」を、固体試料の場合は、「フィルター付き半面型」「フィルター付き全面型」「電動ファン付き」を用意。
- JISHA方式にあった「作業者の作業服・手足・保護具に化学物質による汚れ」を残し、補正係数10とする。
- 2成分以上を入力した場合は、CREATE-SIMPLEの「物質の含有率による補正」は行わず、各TLV-TWAを成分蒸気濃度で重み付けした調和平均により求めたTLV-TWAmixを使用。
- GHS分類としてILO分類でなくUnified Hazard Banding分類を使用。S表示に「眼・皮膚・経皮(吸収)」の影響部位を添え書き。
日本GHS/EU-GHS・・・日本政府によるGHS分類結果を使用するのか、あるいはEU諸国のCLP規則に基づくGHS分類を使用するのかを選択します。
【日本GHS】(デフォルト選択)
日本政府によるGHS分類結果(2021年9月時点で3203物質)であり、NITEホームページにて公開されています。国際的に信頼できる情報源、動物実験、in vivo/in vitro試験、刺激性試験等に基づき危険有害性が分類されています。この分類結果を使用すると、ばく露経路を網羅したリスクレベルを得やすい反面、吸入ばく露の有害性指標である職業ばく露限度から判定した場合よりも有害性が過大に評価される場合があります。
【EU-GHS】
EUで通用するCLP規則に基づくGHS分類結果(日本GHSの3203物質のうちEU-GHSにある物質は2021年9月時点で1406物質)(引用元はこちら)であり、化学物質がサプライチェーンの風上から風下に流通するまでの各工程において、労働者等の健康障害を防止する目的で策定されています。その際、毒物学的な試験・推定だけでなくEUの各種規制やステークホルダーの意見も考慮して決められるようです。CLP規則は、危険有害性の分類だけでなく、あり得そうなばく露の経路、期間、頻度を反映したEU版OELとも言える導出無毒性量(DNEL) の特定についても規定しています。これによりCLP規則でのGHS分類は、日本GHS分類よりも職業ばく露経路である経気および経皮ばく露を主に考慮した分類
となる傾向にあり、職業ばく露限度(OEL)から類推される有害性に近い評価結果が得られやすいという特徴があります。ただし、日本でリスクアセスメントが義務付けられている物質の中にはEU-GHSにないものも相当数あるため、注意が必要です。加えて特定標的臓器毒性(単回/反復)の臓器名の情報もEU-GHSにはありません。
【NIH-GHS】
米国国立衛生研究所(NIH)の化学データベース「PubChem」のCOMPOUND SUMMARYページに掲載されている「12.1.1GHS
Classification」からの引用(日本GHSの3203物質のうちEU-GHSにある物質は2021年9月時点で2948物質)です。ここには複数の情報源の各分類が掲載されていますが、このツールには最初に表示されている分類を引用しました。表示される優先順位は以下の通りで、上から辿って最初に見つかったGHS分類を採用しています。
EU REGULATION (EC) No 1272/2008
European Chemicals Agency (ECHA)
Hazardous Chemical Information System (HCIS), Safe Work Australia
Hazardous Substances Data Bank (HSDB)
NITE-CMC
この分類にも特定標的臓器毒性(単回/反復)の臓器名の情報はありません。
手法・GHS分類選択の例
〇事業者からCRA手法についての指定がない場合
デフォルトで選択されている「少量・低頻度向け」と「日本GHS」の組み合わせでリスク評価を行います。OELがない場合はGHS分類から危険有害性が評価されますが、日本GHSでは過大な評価になりがちなため、EU-GHSやNIH-GHSも使用して、総合的に判断するようにして下さい。
一方、使用量が1kLや1t以上の場合は、「半定量的手法」と「日本GHS」の組み合わせでリスク評価します。この場合、評価結果としては、有害性の尺度としてGHS分類結果を使った場合のリスクレベルの他、化学物質に職業ばく露限度(OEL)が
設定されている場合は、有害性の尺度としてOELを使った場合のリスクレベルも表示されます。通常、OELによるリスクレベルの方が職場環境の実態に近い場合が多く、これが「レベル
I」であれば、多くの場合リスクは低いと判断出来ます。
所属の事業者がCRA手法を指定している場合は、それに従ってください。