2成分以上の混合溶液のOELは、以下のように算出しています。
全ての成分がppm単位のOELデータを有する場合→各成分のOELについて、各成分のモル分率、蒸気圧、活量係数で重み付き調和平均を行い算出
OELデータのない成分を有する場合→OEL情報のない成分についてはGHS分類から求めた目標管理濃度範囲の上限をOELとして使用して、上記の方法でOELを算出
全ての成分がOELデータを持たない場合→混合物のOELを算出しない(GHS分類から割り付けたハザードレベルに対応する目標管理濃度範囲を使用)
実験条件で「全量散布」に該当するとした場合は、各成分のモル分率のみの重み付き調和平均でOELを算出
混合溶液以外の混合物のOELは、以下のように算出しています。
気体が水に溶解している系で、データベースに対応するヘンリー定数がある場合は、溶質のヘンリーの法則で溶質の20℃での飽和蒸気圧と当該濃度での蒸気圧を求め、飽和蒸気圧に対する比を使って溶質のTLV-TWAを修正
固体のTLVmixは重量濃度で重み付けした単純調和平均で算出
ミスト発生の場合、蒸気とミスト(微小液滴)が混在するため、混合時の各成分の蒸気圧とモル分率から見積もった混合物のppm単位でのTLV-TWAと単純調和平均での見積もった混合物のppm単位でのTLV-TWAを比較し、小さい方を混合物のTLV-TWAとして採用
混合物のOELとして各成分のOELの重み付き調和平均を使用することについては、WorkSafeBC OHSガイドライン Part 5の「Reciprocal Calculation Procedure」を参考にしました。
この参考元で提案されている調和平均の方法は、炭化水素溶媒混合物のOELを炭素数に応じたOEL指標値を使って求める方法ですが、
「個々の化学物質成分の毒性効果が加算的である場合」
にのみ適用可能としています。更に、このようなOELの調和平均に不適切なケースとして、以下の例を挙げています。
不適切なケースに該当する場合には、OELで求めたリスクレベルが過小評価となる場合がありますので、ご注意ください。
なお、各成分の目標管理濃度に対する推定ばく露濃度の比の合算でリスク評価する場合、各成分の推定ばく露濃度に成分濃度が加味されることになるため、本ツールでの混合物OELを使ったリスク評価結果と同様な結果となります。
追加の情報
McKeeら(文献1)は、「Reciprocal Calculation Procedure」の改良として、使用する混合物の成分濃度の代わりに蒸気中の成分モル分率をラウールの法則とドルトンの法則を使って算出して使用する手法を提案しています。本学のツールの混合物OEL算出では、McKeeらの手法に活量係数を加えることで、更に精度を高めた手法となっています。
文献1 Richard H. McKee, M. David Adenuga & Juan-Carlos Carrillo (2017)
The reciprocal calculation procedure for setting occupational exposure
limits for hydrocarbon solvents: An update, Journal of Occupational and
Environmental Hygiene, 14:8, 573-582, DOI:10.1080/15459624.2017.1296236