混合物のOEL算出について

2成分以上の混合溶液のOELは、以下のように算出しています。

混合溶液以外の混合物のOELは、以下のように算出しています。

注意!

 混合物のOELとして各成分のOELの重み付き調和平均を使用することについては、WorkSafeBC OHSガイドライン Part 5の「Reciprocal Calculation Procedure」を参考にしました。

この参考元で提案されている調和平均の方法は、炭化水素溶媒混合物のOELを炭素数に応じたOEL指標値を使って求める方法ですが、

「個々の化学物質成分の毒性効果が加算的である場合」

にのみ適用可能としています。更に、このようなOELの調和平均に不適切なケースとして、以下の例を挙げています。

  1. 顕著に小さいOELを持ち、かつ、特異的な毒物学的特性を有する成分を含む場合
  2. 成分間でトキシコキネティクス(毒物代謝動態学)相互作用がある場合
  3. 各成分の沸点の相違が45℃以上の場合(蒸気圧が一ケタ以上異なる場合)
  4. 蒸気以外のミストやエアロゾルになる場合
  5. オレフィンなどの不飽和炭化水素や多環芳香族炭化水素(PAHs)の場合

不適切なケースに該当する場合には、OELで求めたリスクレベルが過小評価となる場合がありますので、ご注意ください。

なお、各成分の目標管理濃度に対する推定ばく露濃度の比の合算でリスク評価する場合、各成分の推定ばく露濃度に成分濃度が加味されることになるため、本ツールでの混合物OELを使ったリスク評価結果と同様な結果となります。

追加の情報

 McKeeら(文献1)は、「Reciprocal Calculation Procedure」の改良として、使用する混合物の成分濃度の代わりに蒸気中の成分モル分率をラウールの法則とドルトンの法則を使って算出して使用する手法を提案しています。本学のツールの混合物OEL算出では、McKeeらの手法に活量係数を加えることで、更に精度を高めた手法となっています。

 文献1 Richard H. McKee, M. David Adenuga & Juan-Carlos Carrillo (2017) The reciprocal calculation procedure for setting occupational exposure limits for hydrocarbon solvents: An update, Journal of Occupational and Environmental Hygiene, 14:8, 573-582, DOI:10.1080/15459624.2017.1296236